渋皮栗「こだわれ」シリーズ

Astringent chestnut ‘Kodaware’ series

「こだわれ」シリーズは、ふぞろいなサイズの渋皮栗の甘露煮をパックしたオリジナル製品です。通常は高単価な食材である栗をコストパフォーマンスよく提供することで、洋菓子・和菓子を中心に広く使われています。収穫後に新鮮なまま炊き上げた栗の味と風味は一級品。でも大きさはバラバラ……という一見アンバランスな製品の開発には、食材と向き合った末の発想の転換がありました。

高級食材「栗」が抱える悩み

栗ごはんや栗まんじゅう、甘栗、モンブラン。毎年、秋を待ち遠しく思う人もたくさんいるはずの「栗」は、上野忠が扱う数えきれない食材のなかでも高級品のひとつです。栗を扱う競合の食材メーカーも多くいるなかで、上野忠の一貫した強みは「味わい」です。

栗は鮮度が命。収穫後の栗は外側の鬼皮をむき、水につけて保存しますが、時間が経つほど味が落ちていきます。海外産の栗を日本で調理・加工する場合は2週間ほどかかってしまうため、上野忠では中国に進出し、パートナーを開拓。生産した栗製品はすべて買い取るという条件で、栗産地で収穫した直後に工場でふっくら炊き込む「現地での一貫生産」の体制を構築しました。

しかし、栗ならではの悩みがありました。炊き込む時間をかけると実がやわらかくなり、粒のサイズを分けるときに崩れてしまうのです。規格に合わない栗は捨てるかペースト状に加工するしかない。

鮮度とおいしさを追求するほど、ロスが出てしまうという、深刻なジレンマがあったのです。とはいえ形をきれいに保とうとすれば、加工の質が落ちて味わいを損なってしまう。それだけは避けなければなりませんでした。

逆転の発想で「こだわり」をそのままに

そこで先代社長が考えたのが「もっとも美味しい栗をつくり、割れたまま販売する」という逆転の発想でした。「こだわったら割れちゃいました」という意味の「こだわれ」シリーズの誕生です。味に妥協せず、かつ価格を上げずに提供するにはこの方法が最適だという決断でした。

しかし、販売開始当初は「こだわれ」はまったく商品に採用されませんでした。サイズが揃わない栗商品はそれまで存在しておらず、いくら味がよくても見栄えの悪い不良品を集めているだけと見られてしまったのでしょう。秋の食材の主役であるがゆえの困難でした。売り先が決まらないまま、一時期は3年分の在庫を抱えるまでになりました。

状況が好転していったのは、販売開始から1年が経ったころ。「こだわれ」に価値を感じたお客様は、大手企業でも、王道の和菓子店でもありませんでした。

「ふぞろい」ではなく「自由自在」だった

「味がいい栗が、買いやすい価格で、こんなにたくさん入ってる!」。

そう喜んでいただけたのは、街のベーカリーや洋菓子屋さんなどの個人店でした。さまざまなサイズの割れ栗を自ら分け、大きな栗は商品の表に添えて、小さな栗は中に混ぜ込むなど創意工夫で様々な商品が生み出されたのです。ある洋菓子屋さんが開発した「栗がふんだんに入ったパウンドケーキ」は、まるでスポンジで栗をつないでいるような贅沢さで人気商品に。ふっくらやわらかく炊いた「こだわれ」は、加熱で栗が固くなりやすい洋風の焼き菓子にもぴったりでした。

素材そのままを活かす「引き算」の和食と違って、洋食は味つけと加工でおいしさを作りだす「足し算」の食文化。サイズが揃わないことは大きなマイナスになりませんでした。むしろ自由自在にアイデアを出せると面白がっていただけたのです。

製造ロスの危機から生まれた「こだわれ」は、伝統的に和菓子の用途がメインだった上野忠にとって、洋菓子の世界に商品を届ける扉を開きました。そして、時代の変化にも寄り添うことができた商品です。ふぞろいでもいい。本当の価値は食材を大切にして、素材の可能性を見つけることなのだと。

用途

パン

ふんだんに使えてパンとの相性も抜群です。

まんじゅう・餅

こだわりの栗が饅頭との相性も抜群です。

パウンドケーキ

バラバラなサイズの栗が豊かな食感を食感を演出します。

活用例

こだわれ栗のパウンド

Carefully Selected Chestnut Pound

栗がゴロゴロ入った贅沢スイーツで手土産にもおススメです。

こだわれ栗のラウンドパン

Specially selected chestnut round bread

渋皮栗をリッチに散りばめた贅沢なパンです。

栗露餅

Chestnut Romochi

涼やかで凛とした美しさで魅了します。