「桜の花」シリーズ
Sakura Blossom Series
私たちは「桜」のことをどれだけ知っているでしょうか? 上野忠では、桜の花を「塩漬け」「冷凍」「ペースト」「エキス」などの製品に加工して販売しています。日本人にとって古来から春の風物詩だった桜を「食材」として人々の暮らしに届けていく挑戦は、思わぬ壁と発見の連続でした。

「葉っぱ」から「花」へ
いま、桜は和菓子だけでなく、スイーツからドリンクまで多くのメニューに使われていますが、「桜の花」が食べものとして一般生活に普及したのは、とても最近のことです。元来は塩漬けの「葉っぱ」を「桜餅」を巻くために使用するもの。上野忠も桜餅のための「大島桜」種の葉を長年取り扱ってきました。
ターニングポイントを迎えたのは、2000年代のはじめ。海外からの観光客が増え、日本文化や和食の評価が高まってきた時期です。寺社仏閣、お寿司、富士山。そして「お花見」が注目されていました。そのとき先代社長が思い浮かべたのが、お祝い事の席を彩る「桜茶」でした。桜の塩漬けがお湯のなかで花開き、心を和ませる。この美意識を世界に届けることができないだろうか? 「花を食べる」という食習慣を、海外の人々がどれほど受け入れてくれるかはまったくの未知数。しかし、日本人としてチャレンジすべきだと決意しました。


最高級の桜を求めて海の向こうへ
食用桜の量産化は、困難をきわめました。国内の桜はほとんどが観賞用であるため、中国に桜の産地を開拓。花びらが多く色が美しい「関山」種を栽培しましたが、すぐに文化の違いが壁になりました。桜の製品化には、花を傷つけず摘み取り、土や虫を根気よく取り除く作業が不可欠。しかし、現地の従業員の方々は繊細な桜の花をうまく扱うことができません。日本人の優れた衛生感覚から生まれた品質管理は、中国の方にとっては過剰なこだわりに映っていました。契約条件やマニュアル整備など数々の手を尽くしたなかでも、もっとも役に立ったもののひとつは工場に作業員専用の「大浴場」をつくることでした。毎日清潔なからだで仕事にのぞむことで意識が変わり、自然と作業のクオリティが上がったのです。
こうして、日本国内ではつくれない最高級品質の食用桜の花が製品化されました。それを最初に商品に採用したのは、意外にも和菓子や和食ではありません。世界的な外資系コーヒーチェーンの日本法人でした。カフェラテに桜をアクセサリーのように散りばめた、いまでは定番の商品。当時はまさに“挑戦的”なドリンクのかたちでした。外資系企業のイノベーティブな精神が、上野忠の食用桜の花を発見したのです。その大ヒットをうけて日本企業も次々と桜の花を商品に取り入れていきました。
美しさが開いた未来
そして、上野忠の桜が新たな食材として広がっていくなか、おもわぬポテンシャルが花開きます。花びらから抽出されるエキスに、高い「美容効果」が発見されたのです。肌の老化を防ぎ、コラーゲンの生成を促進してハリやツヤを与え、シミやそばかすも抑えます。かわいらしい桜の花が美しさを引き出すパワーを持っていることがわかると、一気にビューティー需要が増加しました。実は現在、上野忠の桜の花の大部分は食材としてではなく「美容ドリンク」や「フェイスマスク」などに使われているのです。
古来から日本を象徴する花であった「桜」。その美しさを世界へ届けるためにはじまったプロジェクトは、開発者の予想を超える可能性を広げてくれました。
春のたった1週間ほど、中国にある上野忠の桜畑は収穫スタッフで賑わっています。
用途
カフェラテ
今では定番の季節限定さくらのカフェラテ。
美容製品
花びらから抽出されるエキスに、高い「美容効果」があり、肌の老化防止や、シミ・そばかすも抑えます。
チョコレート
桜の華やかな香りと濃厚なチョコが織りなす贅沢な味わい。